三十になった詩人 BY コクトー

   三十になった詩人


 僕、今や、人生の中道に在る、
 自分の美屋(びおく)に馬乗りに跨(またが)ってる。
 同じ景色が両側に見える、
 違うのはただ季節だけ。


 この側の赤地(あかつち)は若羚羊(わかかもしか)の角に似た
 葡萄の蔓(つる)だ。ぶら下がる洗濯物や、
 笑い声や、シグナルが目を迎える。
 むこう側には見えている冬と報酬の僕の名誉が。


 ヴィナスよ、まだ、僕を愛してくれて有難う。
 万一君を語らなかったら、
 万一僕の家が詩で出来ていなかったら、
 僕は足場を失って屋根から墜落するはずだ。


                BY コクトー

 人の思いが全て勘違いから出来ているとすれば、
 その視野は全て詩で出来ていてもいい。
 全て美しいものでかためて、
 世界を奇麗にしてあげて、
 世の中を整頓する。
 これが詩の醍醐味ではないか? 

         Comment  JUNKO. S