問いと答え

     問いと答え


 互いに互いの問いとなり
 決して答えにゆきつけぬまま
 やがて私たちの言葉は
 ひとりひとり心の井戸で溺(おぼ)れ死ぬ
 世界が問いである時
 答えるのは私だけ
 私が問いである時
 答えるのは世界だけ
 時は遂に血にすぎない
 寂寥(せきりょう)のうちに星ぼしはめぐり続け
 対話はただひとりの私の中で
 いつまでも黙ったまま
 どうしょうもなく熟してゆくだろう


        BY 谷川俊太郎


 谷川俊太郎の詩集は私が学生時代に
 愛読書となっていたひとつで、
 この他、「恋のはじまり」という詩の
 大ファンであったことから、
 書棚に収めた一品である。
 特に読書家ではなかったのであるが、
 様々な文章のジャンルがあるなかで、
 詩は好きな部類に入る。
 簡潔な所、透明感、繊細、核心的な言葉、そして、日常。
 詩には短いながら、
 これらの内容が詰まっている。
 こんな大人になってから詩集を手にするとは
 思わなかったのですが、
 今回はこれを
 頭を休めるために借用し、
 そしてまた、
 私と詩の関係を理解して頂けると嬉しいです。


              BY 淳子